生贄花嫁のあやかし婚姻譚

作者卯月みか

代々、妖狐の生贄花嫁を輩出してきた藤羽家の長女・紫乃は、左耳が聞こえない代わりに、人が内心に抱いている悪意を、音として聞くことができる。下女扱いを受けて虐げられて生活していた紫乃は、ある日、父に呼び出され、本来なら妖狐の生贄花嫁になるはずのしるし・花の痣を持っている義妹の代わりに、嫁ぐように命じら…

代々、妖狐の生贄花嫁を輩出してきた藤羽家の長女・紫乃は、左耳が聞こえない代わりに、人が内心に抱いている悪意を、音として聞くことができる。下女扱いを受けて虐げられて生活していた紫乃は、ある日、父に呼び出され、本来なら妖狐の生贄花嫁になるはずのしるし・花の痣を持っている義妹の代わりに、嫁ぐように命じられる。生贄として、妖狐に食べられてしまうのだと覚悟を決めていた紫乃は、意外にも、妖狐の千歳から大切に扱われる。実は千歳は、平安時代、妖狐一族と勢力を二分していた鬼の一族の頭領を封印していた。生贄花嫁はかつて妖狐と共に鬼の頭領を封じた巫女姫の子孫から選ばれる少女であり、封印を継続させるための鍵だった。けれど、義母と義妹に虐げられている紫乃を、子供の頃から、ひそかに見守っていた千歳は、紫乃を愛していた。紫乃が嫁いできて、嬉しかったのだ。千歳は長年藤羽家の娘たちを生贄に捧げてきたことに罪悪感を抱いていた。そんな千歳のために、紫乃は自ら生贄になろうとする。けれど、千歳との愛を確認し、二人で力を合わせて、鬼の頭領を封じ込めようと決意する。鬼が復活した時、紫乃に巫女姫の力が蘇り、鬼の封印に成功する。