嵐を呼ぶためにはピアノソロが必要だ

作者アーナンダ・スン

「頼むよ。夜も寝られない」と懇願され客先に出向くと天井にびっしり耳朶《みみたぶ》が生えていた。

「夕方までにやってくれ。金は幾らでも出す」

依頼人は涙目で頭を下げた。


「わかった」


耳掃除職人の黒柳は聴診器の駆除を副業にしている。

客の男は土浦厳と言った。壁のある街から来た男と称して…