東京都。日本国の首都にして、青少年がチームを組み珍走団として活動する夜の街。その街の中を駆け抜ける、一羽の兎。

 筋を通せ、義を成せ、堅気に害するな、不良としての生を全うせよ。
 もしお前が“不良のルール”を破るのなら、兎がお前の影を踏みに来るぞ。

 彼女は正に夜の支配者、月を駈ける幸せ兎。…

「なぁなぁ、知ってる? “幸せ兎”のこと」


「ああ、知ってるよ。“ラッキーラビット”のことだろ?」


 ヒソヒソ、彼等は口にする。


「仁義を守らない奴を嫌うんだってさ」


「“不良のルール”を守らせるんだろう?」


「あんなのただの噂だろ?」


「でもまた一つ、族が潰されたらしい」


 ヒソヒソ、人の口に戸は立てられない。




 噂が広がるのを、黒炭くろずみ陽向ひなたはただ聞いていた。不良が屯するこのクラブでは、トランス系の音楽をDJが絶えず掻き鳴らし続けている。その音に紛れて、ヒソヒソと噂が付いてくるのだ。


 長居は不要だ、陽向は飲み終えたグラスをカウンターテーブルに置き、千円札を二枚置いてクラブを出た。


 着信が鳴った。ポケットの中のスマートフォン、それがある女からの着信を告げていた。陽向はスイッとスマートフォンを操作し、通話を開始する。



〈――今、どこ?〉



 鈴の鳴るような、高い女の声だった。幼さの残るその声に、陽向は目の前で降りた踏切の蛍光灯を見ながら答える。


「いつものクラブだ。暇してた」


〈じゃあ、手伝って。会いたい〉


 彼女の言葉に、陽向は目を細める。


「OK、ラビット。今行くよ」


 冗談めかしてそういえば、電話口の女は小さく笑った。〈待ってるね〉の言葉と共に、電話は切れた。



 幸福を運ぶ兎さん。月夜に駈ける兎さん。どうぞこちらへ、手の鳴る方へ。


 弱き者に力を。悪しき者に拳を。子供達に友情を。秩序を乱す者に罰を。


 電車が通り過ぎ、通れるようになった踏切を陽向は歩き出す。右足の義足が、少しだけ不調を訴えるように軋んだ。



o,+:。☆.*・+。


この小説は以下の内容を含みます


※暴力表現・犯罪表現・非人道的な表現

※愛され・多人数交際を匂わせる表現

※虐待・精神病に対する表現

※暴走族・不良に関する表現

※未成年の飲酒喫煙表現


以上の内容が苦手な方はご注意を



⚠この小説に登場するキャラクター、団体は全て架空のものです。

⚠登場するキャラクターが犯罪を犯す表現がありますが、この小説は犯罪を助長する目的のものではありません。


以上のことをご理解頂けると幸いです。



正直このサイトの使い方をよく分かっていません。1ページごとの文字数は少ない方がいいのか、1ページに多く詰め込んでいいのかも分かりません。ご助言いただけるとありがたいです。