記憶に上がる花火はバニラの味を舌の奥に残す

作者魚住真琴

友達がいれば学生生活は十分。
そう自分に言い聞かせていた少女は、ふと花火の音を聞く。
見上げて、空に咲く光の花を視界に入れた彼女は、コンビニで買った飲みなれたアイスを口に含んだ。
瞬間、彼女の脳裏に記憶の花が咲き――彼女の下の奥に思い出の味を深く刻んだ。

ヒュ、と空気を切る音

光が消えて、一瞬の静寂

パ、と光の花が咲いて

耳を劈く音が鳴る


音と共に思い出すのは


私を笑顔にしたいと言った君。