七夕前夜【加筆版】

作者佐保彩里

 自由恋愛が認められた21世紀を生きる、日本の恋人達。そんな彼らを外因的に引き離したのは、遠距離でも、死別でも、家庭や経済的な理由でも無い。時代……“時世”だった。
 苦学生の龍彦とフリーターの詩織が、交際半年を迎えた春。突然、嵐のように始まった、新型の感染症。それまでの日常は一変し、触れることも…


不要不急を禁じられた夏の夜。


泣きながら、ついに“彼女”は言った。


藍色月


「何で会ったらいけないのかな?」


「好きなのに」


「同じ街にいるのに」


「真面目に生きてるのに」


涙ぐむ少女


この時代に、僕達は生まれた。


何故、出逢った? をした?


七夕前夜