“僕”が嫌で嫌でたまらない。“僕”が嫌いで仕方が無い。“僕”という殻を捨てたい――仮面を被って、“僕”を隠したら。〈自分〉を愛してくれますか?
『ねえ、キミ』
あるお祭りに参加していると、誰かの声が僕を呼んだ。
『お面いらない?』
どうやら面を売っているらしい。
『キミにピッタリの“仮面”があるんだ』
そう言って、狐の面を出してきた。
『狐?』
『キミなら絶対に使いこなせるよ』
使いこなす…何の事だ。でも面白そう。500円、まあ良いか。
僕は狐の面を買った。