あの夏を越えて~宵待の時~【完】

作者中嶋 まゆき

失恋と突然の訃報に落ち込む瑠璃。心労と熱中症で倒れた彼女が目を開けると、そこは妖の住む郷だったーー。出会いと別れ。異世界で過ごす28日間で、瑠璃が感じたものとは?

ぼんやりと、空に浮かんだ月を見上げる。

どこか懐かしくて、ひどく切ない。


「さよなら」


私は、ちゃんと告げることができたかな。

あの、夏の日に。



忘れることは、悪いことではない。

忘れ、癒え、そして前に進むなら、何を恥じることがある?


片隅にも残るなら、それは生きている。

たとえ、お前が覚えてなかろうと。