親友咲が紹介してきた彼は、四年八ヶ月前に親の離婚で遠い街に引越してしまった元彼翔。久々の再会に「会いたかった」の一言が言えなかったのは、他にも理由があったから。
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そっと優しく。
そして、ほんのり温かく。
新しく命を吹き込まれたシャボン玉は、虹色に光り輝き。
歪だった形を、正確な球体になるように形を整ながら。
ただただ、風に身を任せ……。
吹き込まれた力の勢いで宙へと高く舞った。
空高く泳ぎ始めたシャボン玉は、反射した太陽の光で輝きを保ち続け。
透き通った姿で、時に虹色に輝きながら向こう側の景色を映し出し。
立ちはだかる数々の障害を乗り越え……。
後から次々と命が吹き込まれたシャボン玉達と、風に揺られて行った。
……しかし。
空高く舞っていたはずのシャボン玉達は、時間と共に力を失って次々と弾け出し。
隣り合わせだったシャボン玉の泡と泡が、お互い勢いよくぶつかり合って重なった時。
脆く…。
儚く……。
僅かな音すら立てず、静かに弾いて消え去った。
ストロー先から次々と命が吹き込まれたシャボン玉は、映し出していた瞳の中で、揺られるようにゆっくりかすみながら徐々に滲んでいき…。
熱い目頭と共に、すっかり歪んで見えなくなった。
力を失い弾けて消え去ってゆくシャボン玉は、まるで彼と出会ったあの日から今日までの私の人生を物語っているよう。
瞳に映していたシャボン玉が、跡形もなく消え去ってしまった瞬間。
彼を失って空虚感に襲われている自分の姿と一瞬重なり…。
とても切なくて深い悲しみに包まれた。
会いたい。
明日、もし彼に会えるのなら……。
今日よりもっと強くなれるのに。
でも……。
長い歳月と共に、いつしか忘れてしまった。
恋に焦がれた彼の香り。
そう、恋の香りを……。
奇しくもその懐かしい香りが、高二になった私の鼻をかすめ。
その香りが、ずっと探し求めていた彼の香りだと確信した時…。
目の前に突きつけられた現実と向き合わなければいけなくなり…。
親友
家族
幼馴染
元彼
多種多様なハードルが、身に迫る現実を見たばかりの私の目の前にそびえ立ち。
無残にも彼の香りを忘れてしまった代償を、一気に払う事となった。
連載開始 2016/2/8
連載終了 2016/3/3
(原作117話 完)
修正開始 2016/10/13
修正終了 2017/8/31
※この物語はフィクションです。
物語に登場する人物名、団体名、施設名は架空のものとなりますので、一切関係はありません。