源義経黄金伝説 第1章5 一一八六年 鎌倉・頼朝屋敷

作者飛鳥京香

義経は人生において、常に逃亡者である。居場所がない。世の中には彼に与える場所がない。

 驟雨が鎌倉を覆っている。

頼朝の屋敷の門前に僧衣の男が一人たっている。

老人である。

その老人を尋問する騎馬が二騎現れていた。二人は、この僧を物乞いかと考え、追い払おうとしている。

「どけどけ、乞食僧。ここをどこと心得る。鎌倉公、頼朝公の御屋敷なるぞ。貴様がごとき乞食僧の訪れる場所ではない、早々に立ち去れい」

語気荒々しく、馬で跳ねとばさんばかりの勢いである。

「拙僧、頼朝公に用あって参上つかまつった」

「何を申す。己らごときに会われる、主上ではないわ。どかぬと切って捨てるぞ」


ちょうど、頼朝の屋敷を訪れようとしていた大江広元が、騒ぎを聞き付けて様子を見に来る。

「いかがした。この騒ぎは何事ぞ」


 大江広元が西行に気付く。

「これは、はて、お珍しい。西行法師殿ではござらぬか」