即興詩篇 雲を泳ぐ魚

作者黒木


 光が海に消えて行く。夜が遠くへ離れるとまた別の夜が少女に永遠を背負わせる。ぼくたちは何も意味せぬまま、海に流れて行く魚を眺めているだけ。

 冬に静かな夜の橋の上で彼女は待っている。忘れられた石よりも先、人形たちの墓場。海のむこうではまた新しい星が。名前を預けた星は雨に流されてしまった。あの、青い色した小さな星。永遠は、雨の日に約束された少女への鎖。真夜中の海では数えきれぬほどの魚が溺れていた。

 光の見つからぬ夜は少女を見失ってはならない。彼女は雨に濡れ、ぼくも濡れている。雨は川を包み込み、かれは少女の記憶を渡したあと、新しい星の最初の夜を待たずにまた、少し離れてしまうのだろう。誰かとめてくれ。ながれるみずを、この夜を