※この作品は切断描写があります。苦手な方、嫌悪する方はご遠慮ください。
時は明治初期。刀を交える時代も終わりを迎えたそのとき人斬り抜刀斎の名や噂が漸く息を潜めてきたその頃・・腕の立つ隻腕剣客がいるという風の噂が人々によって流されている。 その剣客の左頬には十字の刀傷があり橙の髪を結っているが男のわりに身形もほっそりとしているらしい。
そしてそんな噂をする彼らの傍を肩より少し短い橙の髪と頬の十字傷、という女性が通る。
彼女の名は剣。彼女を知るものは別の名で呼んでいたがこの近辺で彼女を知るものはいなかった。
藤色の瞳は何かを耐えるかのように閉じられている。
華奢なその身体は女性らしい丸みを帯びてはいたが、あるはずのものがない。
――つまり剣は髪の長さ以外は噂の剣客と同じ――隻腕だった。