春の闇に散る

作者灰音

春は気持ち悪い。なま暖かい風に血のにおいがした。春の闇、奈落。

妖しくひかる朧月のような僕の姉ちゃんは

風に惑う散る花のように音も立てずに出て行った。

姉ちゃんのお気に入りのあかい鞄をひとつ持って。