白いカラス

作者



全部が嘘だったらよかったに。

この世の全部が嘘だったらよかったのに。


俺たちが生まれたことだって、生きていたことだって、泣いたことも、笑ったことさえも、すべてが嘘だったらよかったと思うんだ。


こんなもののために生きてるんじゃない。



掻きむしっても消すことさえ許されない今。

俺の中から俺が消えていく。

手を伸ばしたって掴むことの出来ない幸せは、俺を嘲うように一寸先に立っていた。


なあ。

なあ、もし聞こえるのなら頷いてくれ。何でもいいから反応を示してほしいんだ。

もう一度だけ言うから。


俺は、こんなもののために生きてるんじゃない。