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「柳さんは違いますよね」 自分を止められない。「柳さんは、僕がいないあっちの世界に戻りたいくせに」 駄々を捏ねるように、僕は柳さんに当たっていた。 沈黙が僕を責める。僕は最後まで背伸びしきれなかった。幼い僕の言い分に、もう彼は面倒臭くて堪らないだろう。でも優しいから、情け深いから、最後まで付き合うんだ。 ──僕の願いは、届かない。「どうしたの、詩音くん」「これが本当の僕なんですよ!」 僕を止めてください──そう思いながら、僕は生まれてから一番の、大きな声で叫んでいた。