またな」

ヒロトはあたしの耳元で囁いて、頬にもう一度キスをくれた。

ごめんね。

『また』はもう、無いんだよ。

「バイバイ」

「ああ」

行きたくない。

行きたくないけど、パパを一人にも出来ないの。

「バイバイヒロト」

だから、ごめんね。

「…? ああ。またな」

最後まで掴んでいたコートを離すとヒロトは踵を返して歩き出した。

「ヒロト!!」

あたしの声で振り返るヒロトにもう一度告げる。

「大好き!!」

ずっと、これからもきっとヒロトを忘れられないと思う。

さっきのキス。

あたしのファースト・キスだったんだよ。

「さっさと家入れ。風邪引くぞ」

にっと笑って、片手をあげて、ヒロトはまた歩き出す。

あたしは、その後ろ姿が見えなくなるまで、

ずっと見ていた……。

「バイバイ。ヒロト…」
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