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この何処までも傲慢で狡猾(こうかつ)な皇帝は、最後の選択を私自身に科した。 択べと。自らの意思で、自身の脚で、自分の傍に来ることを撰べと。 ただそこに、選択肢などありはしない。あるのはただ、この絶対で唯一の必定のみ。 私の意志も、心も、理性も搦め捕る漆黒の双眸が、静かに見据えて裁断を促す。「璃依。来い、俺の傍に」 渇望の滲むその声音に、魂が震えた。 その深淵に囚われたまま、ユラリと身体が傾ぐ。 包まれたのは、逃げることは赦されない悠久の牢獄。 憶えたのは安堵。この選択を後悔することはあっても、間違いだと思うことはないだろうという確信。「覚悟しろ。もう、ぜってぇ逃がさねぇ」 吐息にも似た掠れた声が、耳朶を擽る。 薄い唇が髪に埋もれる耳を掘り出し、咬み跡を残して所有を主張した。「誰にもやらねぇ。お前は、俺のものだ」 返り血を浴びた狂気の皇は、艶然と極上の愛を囁いた。