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ひとりの人をずっと想い続けることが出来ますか?

鈴蘭の薫り〜Everything is you〜相野井潤也

 教師をしている田原史美25歳は、小学校から友情を育む幼馴染4人がいた。幼馴染である篠塚秀輝は、幼い頃から史美に想いを寄せていた。秀輝は想いを隠しながら、そっと寄り添うように史美を支えていた。そんな時、史美は恋人からプロポーズを受ける。しかし、史美は何故かプロポーズを受け入れきれずにいた。  戸惑い続ける史美に、秀輝は想いを隠しつつ優しく寄り添っていた。そんな想いに気付かない史美に、周囲の仲間たちはこうした状況を歯痒く思っていた。そんな中、秀輝を慕う幼少期の昔馴染み花村沙帆が現れる。史美への一途な想いを知った沙帆は、秀輝へ積極的な態度を強めていく。やがてそれは史美の心にも大きな衝撃を与えるのだった。 ― 登場人物 ― ・田原 史美(私立聖応小学校教諭。) ・篠塚 秀輝(史美の幼馴染。) ・桐原 眞江(史美の幼馴染。) ・加藤 和明(史美の幼馴染。) ・古谷 尊 (史美の幼馴染。) ・佐古 俊一(史美の恋人。) ・上尾 伸次郎(眞江の恋人。) ・中島 晶 (和明の恋人。) ・花村 沙帆(秀輝の幼馴染。) ・高尾 晴子(沙帆の親友。) ・西條 誠 (秀輝の高校時代の親友。) ・福川 桃子(史美の高校時代の親友。) ・牧野 浩二(バー/ホワイトデーのマスター。) ・宮島 華 (スナック/華のママ。) ・八木沢 克弘(私立聖応小学校/校長。)  ・池本 義春(私立聖応小学校/教頭。) ・伊藤(私立聖応小学校/教諭。) ・芳山(医師。) ・三咲 琢磨(小学校4年生。) ・三咲 和佳子(琢磨の母。) ・三咲 哲郎(琢磨の父。) ・篠塚 厚史(秀輝の父。)・ ・篠塚 伊久子(秀輝の母。) ・田原 珠美(史美の母。)
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  • 完結 14ページ
“ 冗談じゃない! ”

「何言ってんの。何言ってんのよ!」
 史美は、あふれる涙を拭いもせず叫んでいた。
「アタシは、絶対にヤダよ。そんなの無責任過ぎる。アンタは、それで満足かも知れないけど、残された人の気持ちは・・・アタシは、どうすんのよ!どうすればいいの?どうでもいいって言うの。」
 声が上ずり大きくなっていくのも構わず、史美は秀輝に続けて叫んだ。 
「ねぇ・・・聞こえるでしょ。聞こえるよね、アタシの声が・・・。今度もまた、アタシのために目を覚まして。」
 秀輝の手に唇を当てて、史美は必死に祈った。
「お願い・・・。」
 史美の祈りに呼応したかのように、空が白み始める。史美の涙が、握っている秀輝の手に伝っていく。
 秀輝の手がそれを感じているのか、微かに指が動き始めた。
「篠塚!」
 史美の声に反応しているかのように、今度は確実に史美の手を握り返す。
「そう!アタシだよ。ここにいるよ!」
 秀輝の口元が微かに震え始める。
「タ・・・タ・ハ・ラ。」
 酸素マスクの下から、秀輝の口が動いているのが分かる。
「先生を!早く、先生をお願いします。秀輝さんが目を覚まします!」
 ベッドの脇にあるナースコールを押しながら史美は叫んだ。史美の声は、病室の外にいる秀輝の両親にも聞こえた。その声を聞いて、伊久子が病室に入って来る。
「秀輝!」
 厚史が急いでナースセンターに走って行く。
「篠塚!」
「田原・・・。」
 史美は秀輝の手を頬に当て、意識が戻ったことを喜んだ。史美の温もりが、その優しい声が秀輝を呼び戻した。 
13ページより