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『これ、何のために買ったと思いますか?』

一眼レフをずい、と突き出すとそれぞれに首を傾げる。そうだろう、分かる訳ないだろう、鈍感臆病組め。

俺は静かに、けれど怒りをこめて。

『…あんたらの結婚式のためだよ…!』

そう言ってやったのだ。

『……え、江藤、ごめん』

「嘘……こういうカメラって高いでしょ?買ったの?」

おろおろしだす2人に何故だか悲しさは倍増。ああそうさ、高かったさ。でも和泉さんと涼音さんが結婚ってことになったら何時の間にか買ってたんだよ。

なのに。

『結婚式はやらないって。え?どういうことっすか?はァ?』

『……』

「……」

そっと俺から顔を逸らす和泉さんと涼音さん。今更結婚式なんかしても呼ぶ人がいない、と。研究馬鹿と人付き合いド下手がお互いに納得してしまったのだ。悲劇だ。

それを聞かされた俺に残されたのは新品の一眼レフ。こうなったら新婚を撮りまくるしかないのだ。

『文句は言わせませんよ』
396ページより