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由那さんは一瞬目を見開いた。
うんともやだとも言わずに彼女は伏し目がちになってそのまま窓の外を見た。

太陽の光が由那さんの髪の毛をすべってまぶたに落ちる。薄ピンクに色づいた唇から鼻筋を通ってその瞳までが線になり、俺の目はそれをなぞった。

俺が今まで見てきたすべてを超えて、由那さんは綺麗だ。

この人を、見つけた。
20年かかってしまったけれど、でも、俺は見つけることができた。
こんなふうに彼女を独り占めできる時間が、俺には与えられた。

神様は少しだけ意地悪だけど、やっぱり俺の味方だ、と思う。
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