by
つい昨日のこと。気恥ずかしい想いがありながらもおずおずと控え目に手を挙げてみると、ほとんどの先輩運転士が手を挙げ返してくれたのだ。
 これは今日子の勝手な思い込みなのだが、なんだか運転士として仲間入り出来たような気分になれたことと、憧れだった所作を自分もする立場になったことが嬉しく、その日帰ってからベッドの上でそのことを思い出しては「キャー」と言って枕を抱きしめ身悶えするという、人には見せられない行為にまで及んでしまう始末だった。
「……何を言い出すかと思えばお前は……挙手挨拶なんてこれから嫌になるほどするんだからそんなことでいちいち感動すんなよぉ」
 島崎は少し呆れた口調で返事をした……が、気持ちはわからないでもなかった。自分も新人運転士の時、似たような想いをしたからだ。
5ページより