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澪、さっきからコイツに意味分かんねえことを言ってんじゃ、」112ページより
「──雪平」
「……」
そろり、
氷のような瞳が雪平に落とされる。
わたしに触れようか触れまいか宙ぶらりんになっている手もとを一瞥した。
「さっきからずいぶんとメイのことが心配なようだけど」
一宮さんだったら、
この人だったら、
わたしを明けない夜から解放してくれるんだろうか。
いつしか願うことを忘れてしまった。
取り繕った薄っぺらい笑顔の奥にしまいこんで、仮初の自由に縋っていたんだ。
「──彼女は俺のだから、その役目はオマエじゃないよ」