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合格を確認して、大はしゃぎした後、美沙都は僕にお礼を言ってきた。「ううん。だって、私予備校にも行ってないのよ」「それはそうだけど」「圭太にどう感謝すればいいか分からないわ。何か私にして欲しいことある?」 僕の頭には様々なことが過った。今後一生僕以外の男と関わらないでほしいだの、携帯に入っている僕以外の連絡先を全て削除してほしいだの……でも、それを口に出すことはできなかった。「僕は感謝してほしくて美沙都の勉強をみていたんじゃないから。美沙都が喜ぶ顔が見たかっただけだよ。だから僕はもう満足だよ」 出会った当初は、僕と美沙都の背丈はそんなに変わらなかった。僕の方が若干大きいくらいだった。でも、この三年で僕の方が美沙都よりも随分背が高くなった。年の差はたった一年だから、一緒に歩いていると僕が美沙都よりも年下になんて見えない。「圭太って……本当にいい友達だわ。私は圭太が友達で幸せ者ね」 美沙都はとても喜んでいる。でも、少し胸に痛みが走る。最近気が付いたけど、美沙都が僕に友達という言葉を使うと、僕は少し気持ちが落ち込むらしい。美沙都は僕だけの美沙都でなくてはいけないはずなのに……。いや、きっと違う。美沙都はまだ僕が何の力もない子どもだから、僕に負担を掛けない為に『友達』という言葉を使っているんだ。美沙都の深い心の底では、美沙都はきっと僕のことを求めているはずだから…………。