「一回しか言わねえぞ」

本日何度目か分からない呆れた溜め息を吐いたシロは、ビー玉の瞳を細めて私の頬に手を添えた。

「守りたいって思うのも、抱きたいって思うのも、殺してえくらいムカつくのも、お前ひとりで充分だ」

「……」

「だから傍に居ろ。それ以外に理由がいるか?」

私の体は何故か震えた。

その小刻みに揺れる指先で宙をまさぐると、そのままシロの首に腕を回してた。

「……シロ」

「俺をやる。それ以外に欲しいものがあるなら言え」

「……ない。何もない」

「……もれなくリュウと智将付きだ」

「すっごい嬉しい」

何も泣く事じゃないのに、私は込み上げてきた涙を止められなかった。

私……。

こんなにも誰かを抱きしめたいって。

こんなにも誰かを恋しいって思った事なかった。
247ページより