by

『俺が一文無しで。』

「…、」

『仕事もなくて。』

「…、」

『そしたら、駆け落ちしてくれる?』

この男、相当なことを言ってるって気付いてんのかな。

ただひたすらにその目を見返していたが、思わず息を吐き出した。そして、もう一度見つめる。

「聞かないで攫うくらいすれば?」

葉月が好きだし、駆け落ちだろうが夜逃げだろうが、今更だ。
323ページより