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鉄条網の向こう側に、信じられないものを見た。ジョニーだった。なんらかの理由で鎖が外れたのだろうか。つぶらな瞳が大粒の涙をこぼしている。尻尾が激しく揺れている。悲痛な声が僕を呼び求めている。
「ジョニー、ダメじゃないか! 僕は戦争に行くんだ! もうお前とは遊べない。おばさんの所へ早く帰れ!」
 僕は叫んだ。すると突然、軍曹に殴られた。ボクシングで鍛えた拳は重い。口の中いっぱいに、血の匂いが広がった。
 貴様ソレデモ軍人カ!? アンナ犬ッコロ一匹ガナンダ! 命令ダ。撃チ殺セ。
 ここは軍隊だ。上官の命令は絶対だ。でも、ジョニーを撃ち殺すなんて僕にはとても出来ない。
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