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「そのまんまよ。……人間ってね、悩んだり傷ついたり落ち込んだりして、何かに抗おうとしているときが一番人間らしく輝けるんだって、私は思うの。ほら、余裕がないときってその人の本性が出やすいって言うじゃない? 困難にぶつかって、思い通りにいかなくて、それでも足掻いて必死になって初めて、その人の本質が見えてくるの。なりふり構わず、本当の自分をさらけ出して、精一杯に今を生きてるの。それって、すごく人間臭くて素敵なことじゃない?」

 いつもより饒舌に語る彼女の声は、どこか熱に浮かされたような甘い響きを持っていた。
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