「おまえ、おれの妻になれ」
「私は、ただの人間です……!」
リルカには、『アイシア』という名前で生きた前世の記憶がある。
とある神に神界に召し上げられそうになったのを、他の神々に協力を仰いでどうにか逃げ出して、人間としての輪廻に戻った記憶だ。
そうして生まれ変わった先では、神々への信仰が廃れ、己で魔力を扱う『魔術』が隆盛していた。
しかし、リルカは決めていた。今世ではお世話になった神々に魔力を捧げ、平穏に、真っ当に、人間として生きて死ぬと。
しかしその願いに似た決意は、同じく神を奉じる人物と出会ったことをきっかけに、揺らぐことになる。
これは人として生きて死にたい、平穏を願う少女が、平穏とはちょっと遠い日々に辿り着くまでの物語。