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16ページより
まだ誰もいない海岸に広がる、柔くてつよい、はじまりの煌めき。穏やかに波打つ水面はそのひかりを受け止めて、きらきらと優しく反射する。
駆け出した裸足にひやりと触れた砂の感触は、もっと感情のままに生きていた頃のことを、私に思い出させた。
後先なんて関係ない、ただ、今ここを走りたい。こんな衝動に突き動かされて走れる瞬間が、どんどんなくなってゆくのだとしても。
私は今、ひかりのなかを、全速力で駆けるのだ。
「凪……!!!」
追いかけてくるその声につかまって、ほんの数秒。追い越された、視線の先。
肩を揺らした彼の頬が、朝日の朱色に染まって見えた。