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「……遼くんの夢が、父親になることらしいんです」

 ぎょっと、桐椰くんがそのぱっちりした目を更にひん剥いて今にも口を塞ぎたいと言わんばかりに手を震わせた。

「お母さんと仲良しで、休みの日になったら子供とじゃれて、運動会ではヒーローで、って父親は、私の憧れなんです。そんな父親に遼くんはなりたいって話してくれました。遼くんと結婚したら、娘はお父さんのお嫁さんになるって言ってくれて、息子は自分にとってのヒーローはお父さんだって言ってくれるんじゃないかなーって思ったんです。そんな優しくて幸せなおうちでお母さんになれたら、お金が沢山なくても、偶に腹が立つことがあっても毎日幸せだなぁって思うんです」

 まぁ、これは、義理ですよ、桐椰くん。恨むなら、私に誠実したことを恨みなよ。

「そんな遼くんと歩けたら、どんな将来でも幸せです」
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