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「気付かなかったようですね」

「……や、」

こんなことしてくるってことは、神田さんは。

「やだな~!なにいってるんですか校長!気付かないわけないじゃないですか!本当は我慢してたんですよ!校長のいたずらに対抗しようと思って!」

「誤魔化す気ですか」

「誤魔化してなんかないです。誤魔化して何の得があるんですか」

「短い黒い髪、珍しい灰色の瞳、高い身長。お目にかかったことはありませんが、変装もしていなければあなたのことだとすぐに分かることです」

「何が言いたいのか分かりません。それにそんな漠然とした特徴の人この広い世界見渡したら何人いることか」

「おまけに味覚障害。味覚がごっそりと抜け落ちる症状の味覚障害者なんて、どこの世界探したっていません」

「……いるかもしれないです」

「あなたと同じ珍しい灰色の瞳をもった珍しい障害者が?そこまで純粋な灰色の瞳をもつ人間は本当に珍しい。

そんな珍しい特徴を併せ持つ方がこの世にふたりもいるなんて、まるでクローンのような話ですね」

「………」

「いい加減認めてください、あなたがあの」

「言うな」

「………」

「その名を言うな神田茂吉」

「……わかりました、星羅さん」

「………」

神田さんが笑った。
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