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「……でも、」

タクラの裾をつかむ。

タクラは何も咎めない。

「もう会えなくなるんだよ」

「………」

「もう、いっしょう、あえない」

「……おいで」

タクラが腕を広げる。

もう何度、その腕で慰めてもらっただろう。

終わりは来るのに。

知ってるのに。

理解してるのに、心の準備はいつも遅れる。

――――タクラの胸に、いつも通り額をつける。

いつも通り、タクラはやさしい。

そして、これが最後だと理解する。

「……いつもと同じなのになあ」

「そう?俺はオメーに触れるの、初めてみたいな感覚だよ」

タクラにも、体性感覚が戻った。体性感覚がなくなる前に触れたことはない。

だから、あたしの温度が伝わるのははじめてだ。

はじめてで、今日が終わり。
829ページより