by
「君は、女神様だ」

「な……」

月に照らされた、セーラ。

まるで切り離された世界を見ているかのように、幻想的な画だ。

「君は僕の女神だよ」

そう呟くと、セーラは悲しそうに笑った。

僕のために悲しみ、また、僕のために笑ってくれたのだった。

「カルファの後ろに隠れてたガキが、ずいぶんな口説き文句を言うようになったじゃないか。大人面しやがって、アイザックのくせに」

「……ふっ」

僕の頭は白髪ばかりで、しわも多くて、シミもたくさんあって、手は骨のようで、足はもう、動かない。

対してセーラはまだ、成人もしていない外見を持っている。

それなのに、セーラはまだ、僕を子供扱いした。

きっとあと十年長生きしても、同じだっただろうね。

彼女と僕の時間は違う。

彼女と僕のいきる世界も違う。

でも、幸せだった、僕は。

君に出会えて。

君の心の片隅にでも、いさせてもらえて。

本当に、幸せだったよ。
124ページより