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「君は、女神様だ」124ページより
「な……」
月に照らされた、セーラ。
まるで切り離された世界を見ているかのように、幻想的な画だ。
「君は僕の女神だよ」
そう呟くと、セーラは悲しそうに笑った。
僕のために悲しみ、また、僕のために笑ってくれたのだった。
「カルファの後ろに隠れてたガキが、ずいぶんな口説き文句を言うようになったじゃないか。大人面しやがって、アイザックのくせに」
「……ふっ」
僕の頭は白髪ばかりで、しわも多くて、シミもたくさんあって、手は骨のようで、足はもう、動かない。
対してセーラはまだ、成人もしていない外見を持っている。
それなのに、セーラはまだ、僕を子供扱いした。
きっとあと十年長生きしても、同じだっただろうね。
彼女と僕の時間は違う。
彼女と僕のいきる世界も違う。
でも、幸せだった、僕は。
君に出会えて。
君の心の片隅にでも、いさせてもらえて。
本当に、幸せだったよ。