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・・・わかってない。

わかってないんだ。この子はわかってないんだ。

自分が何もしてきてないと思ってる。

自分がなにも役にたってないと思ってる。

「だけど麻耶、一応千里たちにはこのこと言わないで」

自分の存在が薄いものだと思ってる。

「なんか最後にさ、別れの挨拶ぐらいしろや!とか言われたら名残惜しくなっちゃうじゃん?」

自分は誰かの役にたてればそれだけでいいと思ってる――――悲しい子だ。

知らなかった。

あたしは口下手だから、人と喋るのが苦手だから。他の子と比べてミホと喋った事はないかもしれない。

でもこの子は悲しい子だ。

自分自身を放り投げながら生きてる子だ。

自分自身を見捨てながら、生きてる子だったんだ。
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