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次の定休日は柳と肉を食べに行くという約束をしていることは忘れてないけど……それが?「ふーん……」「え、なに」「いや、面白くないと思って」最後のお客さんが帰って締め作業が終わると、ホールの照明を落としているから、この時間の店内は薄暗い。日によっては音楽を流しながら作業をしているけれど、この日は無音だった。「どうしたら意識してくれますか」「意識? さあ、なに言ってんだか」カウンター越しに柳がこちらを見てくる。ゆるゆると上がっていく煙草の煙。前髪の奥に見え隠れする冷たく鋭い瞳がすぐそこにあったけれど、わたしはかまわずに作業を再開する。「──瀬那さん」だけれど、唐突に柳に声をかけられた。相変わらず抑揚のないそれに「んー、なに?」と声だけで返事をする。キーボードに触れていた両手が止まる。視界の端、右手に煙草を持ったまま、そっと角度をつけて近づいてくる顔があった。まるで流れるように一瞬で。わたしと同じく目を開けたままの柳と、その瞬間まで視線を合わせて──唇に柔らかいものが押し付けられた。「こうしたら、少しは俺のこと考えますか」