「驚いた。あんたあの"めがねちゃん"か」

「ーーあ?」

この状況に困惑していると、今度は黒羽三咲さんが意外そうな目で私を見てきた。

あれが、こうなったのか、と言わんばかりの視線を受けたけど、すぐに瑠伽さんによって遮られる。

「へえ、あんた意外と化けるんだ」

「三咲」

「この前といい妙なことを言うし、面白いね」

「いーから、お前はさっさと戻れ」

「……ふぅーん」

瑠伽さんがどういうわけか苛立っている。

黒羽三咲さんはその場から離れるつもりは無さそうだし、むしろ今の状況を楽しんでいるとすら思う。

「ゆいこちゃーん、どこー? 連絡先交換しよーぜー?」

そんな時だ。

陽気な声に呼ばれた。

パタパタとカラオケボックスから出てきた男子。帝徳の……なんて人だっけ。

「ってあれ、瑠伽じゃん。遅かったな、」

「教えねーから」

「へ?」

「この子のはダメ。諦めろ」

そのまま乱暴に腕を引っ張られる。

瑠伽さんに誘われるままにカラオケ店から出てしまった。

姫乃に何も言わずに出てきてしまったけれど、大丈夫かな。
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