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「もし綾瀬が先に死にそうになった時は、俺のこと隣に置いてくれる?」

何気なくたずねてみると、綾瀬はハイカロリーのデニッシュにかぶりついていた。そうして、シリアスとは対極の仕草でぐっと親指をたてた。

俺はガラにもなく、ちょっと笑って、小さなパンに歯をたてた。

「その約束、絶対忘れんなよ」

兄貴や藤井達が抱く感情とは違う。

俺が綾瀬に抱くそれは胸糞悪い「恋」とか「愛」とか、そういうものとは全くの別物だけど。でも、死に際の約束を取り付けるのは「愛」を語るよりも、ずっと緊張した。

綾瀬が死んだら、俺もすぐにあとを追うよ。

きっとそれは、オマエを好きな兄貴や藤井達も誰もできない。狂った俺ができる、唯一の愛情表現だと思うから。
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