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列車のドアが閉まる前にと、あたしはぎゅっと目を瞑る。視界が完全に閉じきる前に、凪が半歩後ろに下がって、ドアに手をかけたのが見えて。そして。あたしの瞼に、なにかが当たった。時間をかけるように目を開ければ、至近距離に凪の顔があって視線が絡む。「とれた」そう言う凪の顔も声も、今まで一緒に過ごしてきた中で1番、大人びた表情だった。あたしの瞼を親指で拭って、凪が笑って腕をおろす。「じゃあな、頑張ってこいよ、ブス」