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鬼神がいると言われる世界で、不良少年との交換手紙を代筆することになった

偽りの手紙〜人間ポイントに支配される世界で君を好きになる〜響ぴあの

 我が国に人間ポイントカード制度ができた。これは、人間の能力や優劣をポイント化して、より、劣悪なものを排除する。そうすれば、この世の中はいい人であふれるということから作成されているらしい。  この世界は古代より鬼神と呼ばれるものに支配されているらしい。人類にとっての天敵である鬼であり、逆らうことのできない絶対的な神。その鬼神は人を食べると言われている。人食種だ。人以外のものを食べることができないわけではないが、一定期間食べないと、能力が激減するらしい。定期的に人間を摂取するために鬼神は人類へ危害を加える。そこで、協定を結ぶことにした。生贄を差し出す代わりに、人類へは危害を加えないこと。有名な神話が残っている。  私には殺人を犯す人がわかる。未来予知とは若干違うが、殺人に特化した未来予知なのかもしれない。殺人を犯すであろう人のオーラが見える。これからするであろう人の殺気は黒色が体中に纏わりついている。  黒いオーラに包まれた同級生。百戦錬磨はこの時代、絶滅危惧種である不良だ。その男が私の友人の夏希に手紙を渡してほしいと頼んできた。しかし、夏希は彼氏がいるので、興味がないと断った。そこで、彼の家の大変な事情や家事育児を担っているということを知った私は、代わりに代筆して交換手紙をすることになったのだが。  人間ポイントが支配する世界で低ポイントの中学生である私と百戦錬磨。徐々に錬磨のことが好きになる。でも、錬磨が好きなのは夏希だ。この想いは偽りの交換手紙を通してだんだん大きくなっていく。
  • 学園LOVE
  • 完結 9ページ
「おまえのことをあんなに真剣に愛する人間は桜葉しかいないと思う」
 わかっていたことを言われた。悔しい。一人でもいるだけでも幸せだけれど、裏を返せば、桜葉紫陽以外、つまり百戦錬磨には愛されていない。どんなにこっちが好きだと思っても今更この状況でアピールする手段もないし、そんな馬鹿なことはできない。

「私の魅力を知らない人間に言われたくないけど」
 珍しく強気だ。こんなこと、普通言わないのに。どうしてだろう。

「おまえは、確かに自分を持ってないと思う。自信を持つべきだと思うし、実際素敵な彼氏を大事にするべきだ」
 真剣な彼の顔を見ていたら、思わず涙が出てきた。
 彼氏を大切にしろなんて、わかってる。でも、あんたの口からだけは聞きたくなかった。

 涙をぬぐいながら、そのまま帰宅することにした。
6ページより