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「おまえのことをあんなに真剣に愛する人間は桜葉しかいないと思う」6ページより
わかっていたことを言われた。悔しい。一人でもいるだけでも幸せだけれど、裏を返せば、桜葉紫陽以外、つまり百戦錬磨には愛されていない。どんなにこっちが好きだと思っても今更この状況でアピールする手段もないし、そんな馬鹿なことはできない。
「私の魅力を知らない人間に言われたくないけど」
珍しく強気だ。こんなこと、普通言わないのに。どうしてだろう。
「おまえは、確かに自分を持ってないと思う。自信を持つべきだと思うし、実際素敵な彼氏を大事にするべきだ」
真剣な彼の顔を見ていたら、思わず涙が出てきた。
彼氏を大切にしろなんて、わかってる。でも、あんたの口からだけは聞きたくなかった。
涙をぬぐいながら、そのまま帰宅することにした。