by
「都季の口から言ってくれるのを待ってたんだけど、帝雅に先を越されたから黙ってはいられないよね。」

「え、気づいてたの?」

口から転げ落ちた問い掛けに、相手は頬に空気をためてゆっくり頷いた。

「言ったでしょ、愛しているからこそ都季の事は何でも分かっちゃうって。」

「世凛…。」

「僕には言ってくれないの?」

「世凛っ…。」

涙腺が緩み、途端に視界がぼやけて彼の顔が滲んでしまう。

頬にハラリと落ちる涙を理由は、きっと、彼が余りにも温かくて穏やかな声で包んでくれるからだ。

「腹が立つし絶対に許したくないけど、都季の望みならできる限り叶えたいなって思ってるよ。それを叶える人間は常に僕でありたいとも思ってる。」
139ページより