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 「イチゴジャムは食えるんだぞ?」

 「へー」

 「・・・トウヤぁ!」

 「黙ってろ」

 今回ばかりはたっくんの救世主であるトウヤも知らんぷりで、プレーンで何もついていないホットケーキを美しく切り分けて食べていらっしゃる。

 あたしはメープル味をさっさと食べおわり、イチゴジャムの方に手をつけようとする。

 「無理無理、マジ無理だからお願いユイユイ愛してる」

 「あたしは愛してないよ」

 「・・・」

 「・・・なに?」

 「もういい・・・しぃ」

 突如落ち込み始めたタクトを、少し離れたところからプププと笑うアキラ。苦笑い気味に微笑むシュウジ。

 「オイこらアキラ、てめぇ何笑ってんだ」

 「あははは」

 「・・・」

 「フラれてやん・・・いってぇ!何すんのさ!」

 「お前はリンゴジャムにでも呪われてろ」

 「好き嫌いしちゃダメだってば!ちょっとたっくん~」

 プラスチックのフォークを掴んで、リンゴジャムのたっぷりかかったホットケーキをぐさりと突き刺し、

 「・・・なんだ半泣きなんだ、お前」

 「うるへー・・・」

 トウヤに慰められながら、たっくんはうじうじとホットケーキを齧り始めた。

 トウヤは本当におかんだと思う。保護者。まさしく保護者。
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