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おそるおそる
顔を上げる。

……やっぱりヒロだ。

なんで??
なんでヒロは
美嘉を引き止めたの。

何が起きたの??

思いがけない状況に
頭が混乱している。

「…久しぶりだな」

ヒロは掴んだ腕を離し
口開いた。

懐かしい
ヒロの声。

掴まれた腕が熱い。

悲しいわけではないのに涙が込み上げる。

「…美嘉?」

ヒロが呼ぶ
美嘉の名前…。

あんなに遠かったはずなのに、
今こんなに近くにいる。

ヒロが…近くにいる。

降り始めた雪が、
ネックレスの上にポツッと落ち首もとを冷たくした。

それによって現実の世界へと引き戻される。

優から貰った
ネックレスのおかげ。

「…ヒロっ、久しぶり!痩せたね!!」

緊張のせいか
妙に大声を張り上げる。

ヒロは静かに微笑み、
あの頃と変わらない笑顔で答えた。

「帽子かぶってるからそう見えるだけじゃね?」

その顔を凝視することが出来ず、
ヒロの肩あたりを見つめる美嘉。

下を向くと
涙が出てしまいそう…。

「…帽子かぶってるとこ初めて見たぁ!!」

「今俺の中のブームは帽子だからな!」
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