「…沙奈?」

急に悠真の声がして振り返った時、5階から履いていたスリッパが落ちてしまって下を見た。

「沙奈‼︎」

お腹にギュッと抱き着かれ、あたしの見る世界が、穏やかな星が輝く夜空から真っ暗な地面に変わってしまった。

聖とだったら綺麗な景色が見える…。

聖が居なかったら真っ暗だ…。

後ろに引きずり降ろされ、降り向かされるとフェンスに押されて悠真と目が合った。

「…何考えてる」

悠真の声が震えていた。

『ごめんなさい…』

「落ちたら死ぬぞ…?もう、聖さんに会えなくなっても良いのか?」

『…もう、いいよ…』

会ってもあたしは聖を狂わせる存在。ずっと言われてた。

『自分は変えられない…』
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