シェア
っ」頬をなでる手をそのまま私の首筋へと移動させながら、泉は尚も続ける。「お前が世那や父親と会えて、幸せそうにしてるのは嬉しい」「⋯⋯⋯⋯」「だけど沙羅の大切なものが増えてくたびに、どこかで面白くないと思ってる」哀しみを帯びた瞳が、泉の心を映すように私をとらえる。「沙羅の心にいるのは、俺だけでいいのに」「っ、」「⋯⋯お前を連れ戻したのは俺なのに、今度は世那達に嫉妬してる」自嘲気味に吐き出した言葉が、弱々しく私の耳に響く。⋯⋯泉のこんな顔、見たことがない。まるで私に拒否されるのを恐れるような、そんな表情。いつも寡黙で無表情な泉が、ひとりぼっちの小さな子どものように私を見ている。