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「ほら。起きて。起きなきゃくすぐるよ」489ページより
もちろん返事はなく、ピクリとも動かない。
「5秒だけ待ってあげる。それでも起きなかったら、全力でくすぐるから」
「せっかちか」
「せっかちだよ」
毛布の下から、くぐもった声がした。
「5、4、3…」
カウントダウンしながら、毛布の隅を、そっと両手で掴んで、ゆっくりゆっくりベッドに乗った。
ゼロで一気に引っぺがしてやろう。
抵抗するだろうから、上に乗って、抱きしめて、寒くないでしょって言ってやろう。
妄想でにやけながら、進めていく。
「イーチ、ゼーーーロッ!ちょ、」
突然、毛布を跳ね飛ばして伸びてきた腕が、私に襲い掛かる。
グイと引っ張られ、胸から着地したのは、コウの腕の中。
身動きできないくらい抱きしめられ、どうやったのか、ふわりと毛布に包まれた。
「買い物は夕方からに変更しろ。ランチもディナーだ。美味い酒飲むぞ」
ふむ。
魅力的な計画変更。
ランチよりお酒。
ショッピングより、コウの温もり。
「しょうがないなあ」
ごろごろと、胸に甘えると、腕の力が緩んだ。
後頭部を撫でられ、指が髪の毛を流れる。
気持ちいいなあ。
せっかくだから、コウの気が済むまで寝させてあげる。
その代わり、このままわたしを抱きしめていてね。
end