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俺は、サイドテーブルの小説を手に取った。426ページより
くだらないこと言うんなら続きを読むぞ。と。
すぐそれを感じ取り、ニヤケ顔で口だけの謝罪。
「ごめんごめん。あの時はありがとね。」
クスクスと笑いながら、俺から小説を取り上げ、ワインをグラスに注いだ。
「このワインは重みが私好みなの。香りもいいでしょ?ミディアムボディでバランスがいいの。」
ワインの説明をしながら差し出したグラスを、ベッドに座ってから受け取った。
一口飲んで、あ、うまいなと思った。
辛口の、酸味と渋みがやや強い赤ワインは俺も好きな味だった。
ミステリー小説もそうだが、やっぱりこいつとは気が合う。
好みも似ている。
こういう些細な共通点や、共感できるところを、もういくつ見つけただろう。
だからきっと、こいつが今これからしようと企んでいることも。
きっと、嫌いじゃない。