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俺は、サイドテーブルの小説を手に取った。

くだらないこと言うんなら続きを読むぞ。と。

すぐそれを感じ取り、ニヤケ顔で口だけの謝罪。

「ごめんごめん。あの時はありがとね。」

クスクスと笑いながら、俺から小説を取り上げ、ワインをグラスに注いだ。

「このワインは重みが私好みなの。香りもいいでしょ?ミディアムボディでバランスがいいの。」

ワインの説明をしながら差し出したグラスを、ベッドに座ってから受け取った。

一口飲んで、あ、うまいなと思った。

辛口の、酸味と渋みがやや強い赤ワインは俺も好きな味だった。

ミステリー小説もそうだが、やっぱりこいつとは気が合う。

好みも似ている。

こういう些細な共通点や、共感できるところを、もういくつ見つけただろう。

だからきっと、こいつが今これからしようと企んでいることも。

きっと、嫌いじゃない。
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