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緋色チームが用意した食材はデスソースに片栗粉であった。592ページより
“際どい食材を”という固定観念であった浅葱チームと光希チームには、思いもよらない攻撃であった。
緋色は他二チームの鍋を食べればいいので、自分には害はない。
碧は浅葱チームの生臭さとフルーティーな甘さが混じった鍋を少し食べたが、もたもたしていたら光希が残りを平らげてくれた。
目が血走っていたが、強靱な精神力に拍手だ。
部屋は窓と換気扇全開で、凍えそうに寒い。
しかし湯気と匂いだけで涙が出そうなほどの刺激だったので、致し方ないと思っている。
緋色と心景も大健闘であったが、光希の気迫には一歩届かずであった。
浅葱は出来上がった物を見て、食べる前に棄権しそうであったが、「えっ……残しちゃうの……?」という雪の純真な一声のおかげで、顔を青くしながらも完食した。
雪も目を潤ませながら少しずつ食べていた。
「腹痛ぇ……」
浅葱はソファに蹲る。
勝負が決まっていたのに、わざわざ完食した浅葱は偉いと思う。
意味のないことはしないタイプだが、それも雪の存在があってこそだ。
「鬼畜なんだよ。デスソースにとろみつけてどーすんだよ。辛みが残りやすいだろ。こんなん卒倒して救急車レベルだわ。
舌の感覚ないんだけど」
浅葱は恨めしそうに緋色を見た。