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そんな緋色も、満腹になったお腹を擦りながら、ソファにぐったりともたれている。「アイデア勝負なんだからさ。天才だろ? それにしてもおっかしいな。なんでこれで負けるかな」緋色は首を傾げた。「文句言いつつも光希の圧勝じゃん?」おめでとうと呟く緋色に、「ああん?」と光希は返事をした。嬉しくなさそうだ。本性というのか、命に危険を感じたが故に本能が出ているというべきなのか、とにかく言葉遣いが粗暴である。「ただ食べてダメージ受けるだけなんて、一番無意味なことするわけないだろ」光希はガリガリと氷を噛みくだくと、すぐに次の氷を口に放りこんだ。「それは同意だけど、だからといってなんであれを一気に食えるの?」すでに負けを認めた浅葱は、自分の行為を無意味と言われたにもかかわらず怒らなかった。それどころではないのだろうが、むしろ光希に感心している。「心頭滅却」「いや、どう考えても辛いから。頭空っぽとかおかしいから」一言で返した光希に、浅葱はすぐに突っ込んだ。光希はほぼ一気飲みのような勢いで平らげていた。まだ落ちつかないようで、額に新しい汗をかきながら、リビングをウロウロとする。「光希くんほんと凄い。碧ちゃんとよっぽど温泉行きたかったんだねぇ」心景が苦笑しながら囁いた。「ただの負けず嫌いですよ。鬼気迫りすぎて、褒めていいのかわかんないんですけど」困惑しながら言うと、横で聞いていた雪が笑った。「ふふ、頑張ったので、褒めてあげよっか」温泉のためなのか、勝負事で後に引けなくなっただけなのかわからないが、頑張ったことは事実だ。碧は光希を見上げてこくんと頷いた。みんなお腹は膨れていたが、口直しが必要だ。光希と用意したシャーベットで口内を冷やしながら闇鍋パーティーを終えた。