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「あした腹壊してるかも」マフラーを巻きながらマンションを出ると、光希はため息で白い息を吐く。顔がげっそりしている。勝ったのに、喜びより疲れが滲み出ていて申し訳なくなった。「お疲れ様でした」自分はちょっとしか食べられなかった。光希はこちらに視線を流すと、マフラーに埋もれた口を出しニヤリとした。「ダメージでかすぎ。癒しが必要だな」何かを訴えるように光希の指が絡まった。「最前線で戦った俺を癒すのは、碧の役目でしょ」「も、勿論……!」けしかけた碧は後には引けず、気合を入れた態度を見せた。動機が多少不純な面もあったが、光希ががんばったのは確かだし、勝ったことは純粋に嬉しい。「温泉いつ行こっか? 光希の方が忙しいから予定合わせるよ。たくさん癒してあげるね!」普段から忙しい人だ。癒しも勿論だけど、せっかくなら楽しい思い出にしたい。光希は嬉しそうに目を細めた。暗がりでも、その整った容姿は光って見えてドキリとする。「美味しいものたくさん食べて、綺麗な景色を見て、たくさん碧を愛したいよ。待ちきれないから、とりあえず今から碧だけ先にちょうだい。勿論、当日も忘れずにね」碧はぐっと言葉に詰まった。少し逡巡して、呻りながら返事をする。「……ご褒美! 今日はわたしが、たくさん愛してあげる」照れ隠しに、ぐっと手を握り返して早足で帰路についた。光希が後ろで、笑いを噛み殺す気配がした。了