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――ここは二人の世界、「黒狼、結愛様」ではなく、現実世界。申し訳ない。そんな声色で二人を呼ぶ凱。「空気が読めない。それは百も承知で言わせて頂きます。ここは、パーティー会場で今どんな状況か理解出来ていますか?」「え?」「……」結愛は目を丸くし、結人は先程とは一変して無表情に戻ってしまった。辺りを見渡せば、会場中の視線が二人へと向けられている。「っ、」状況を把握した結愛の顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく余程恥ずかしかったのか、両手で顔を覆った結愛を憐れむ顔で見る凱は深い溜息を吐いた。「黒狼、先程の言葉は突発的なものですか?それとも計画的なものですか?」「……」「計画してたんですか。せめて私には教えといてほしかったです」「……」「心から祝福したいですが、今の状況ではそうもいきません。喜び、困惑、怒り、動揺、色んな感情が一気に押し寄せて混乱しています。混乱しながらも冷静に声をかけた私を少しは褒めてほしいものです」「……」会話であって会話じゃない。寧ろ、ここまで早口で喋る凱を見るのは初めてだ。余程混乱してるのであろう……。凱の隣に立っている英二なんて、早い段階で考える事を放棄してバカみたいな顔で、バカみたいに顔を赤らめ、バカみたいに二人のキスに拍手なんて送っている。