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振り絞るように叫ぶその歌声は

聴いてるコッチの心臓をまるで鷲掴みにするみてぇなそんな、声だった。

ショウの歌声が部屋の中に轟く。

ガラス越しの四角い狭い部屋の中で歌うその姿が

まるで

鳥籠ん中で羽をむしられ囚われた

行き場を無くしちまった
鳥みてぇにも見えた。

その顔を歪め

天に向けて声を張り上げながら

右手でぎゅっと胸元を握りしめて。

そんなショウの姿を
誰もが息を呑んで見つめる中、

キツネ顔のその人だけがゆるりと笑みを浮かべて見つめているのを見て

俺は静かに顔を歪める。

「・・・・・・泣いてる」

曲がサビに差し掛かった頃
音に紛れて誰かが発したその言葉が音に呑まれて小さく消えた。

信じられねぇモンでも見たかのように
スタッフ達がその姿を見つめる。

「・・・アイツ、泣きながら歌ってるぞ・・・」

ガラスの向こうで

ショウが

声を震わせることもなく
それを拭うこともなく

瞳を閉じて

ただただ真っ直ぐに
その頬を濡らしながら

涸れちまいそうな勢いで歌うその姿を
誰もが黙って息を呑んで見つめる。

ーーーなぁ、ショウ。

お前の歌は確かにすげぇ。

身内の贔屓目なんかじゃなく
マジで、すげぇと思う。

もしかしたら、おっちゃんの言う通り
天性の・・・ってヤツなんかもしんねぇ。

そう言っても大袈裟じゃねぇくらいに
お前の歌はすげぇと思うよ。

けど

俺は、お前のこんな姿が見たくて
お前にマイクを預けたワケじゃねんだ。

お前にこんな思いをさせたくて
バンドに引きずり込んだワケじゃねぇんだ。

ーー同じ言葉を

昔も、お前に言ったことがあるのを
お前は覚えてるか?

あの日、

あの、夏の日。

あの時も俺はお前に
そう言ったよな?
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